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[合せ鏡の世界・10]

王様と大神官は、一列に並んだ中年の人々の前に出た。

「諸君。いよいよ、旅立ちの時が来た」
まずは王様が口を開いた。
「これまで理想の世界の構築に協力してくれたこと。王としても、一人の人間としても、とても感謝している」
王様の口上は続く。
「そして、いよいよ旅立ちの時だ。天界にて疲れを癒し、いつか再び理想の世界へと戻ってきてくれ」

これで王様の口上は終わり、次は大神官が口を開いた。
「それでは始めましょう。あなたたちの旅路が穏やかなものでありますよう」

そう言うと、大神官は列の一番前にいる人の肩に手を置き…

…落とした。

”落とした”って言うのは、もちろん崖の下に、って意味で。
崖の下は、一面の雲で…。

「何してるんだッ!!」
僕はそう叫んで、駆けだした。
走るあいだ中、僕の足はなかなか前に進まないのに、大神官の動きは全然変わらないで、列に並んだ人々を、次々に崖の下へ落としていく。
周りがなにやら騒がしいけど、関係ない。
早く”これ”を止めさせないと…!

「如何なさいましたか!?セルク様!?」
王様が立ちふさがり、僕を大神官の元へ近づけさせまいとする。
王様を避けようとするが、簡単に捕まってしまった。
「早く!早く止めさせてください!」
振りほどこうと暴れながらそう叫んだが、
「どうか落ち着いて!大切な儀式の最中なのです!老い無き世界の構築には、”これ”抜きでは立ち行かないのです!」
と王様は譲らない。

「セルク様!おやめ下さい!」
後ろからミクシィの声もする。
「うるさい!僕は御子だぞ!僕の言うことをきけよッ!」
ここぞとばかりに”御子様”の力を使うが、事態は変わらない。
揉めてる間にも、大神官は人々を掴んでは投げ落としていく…!

その時だった。

「「バリィンッ」」

鏡が割れるような音が、頭上から聞こえた。
僕も、みんなも、天を仰ぎ見た。
空が…割れた。
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